2012.11.06 Tuesday 21:08
この記事では、平均顔の簡単な作り方を解説します。
平均顔は、目の間の距離、輪郭の形などが、いくつかの顔の平均値となっている顔のことで、上の画像はその例です。こういった顔を作るのは結構難しくて、モーフィングと呼ばれるコンピュータグラフィックスの技術を駆使する必要があります。平均顔合成ツールは、そのための専用アプリです。
iPhone/iPad用の平均顔合成ツール Average Face を使って平均顔を作ってみたい場合はこちらの記事がおすすめ→平均顔の作り方:今日の平均顔 (54)
しかし、コンピュータやスマートフォンが使えなかった大昔、1870年代に、ガルトンという人が「平均顔っぽいもの」を作っていました。ガルトン がやったのは、何枚かの顔写真を重ね合わせる、というシンプルな方法です。
これを「重ね合わせ法」と呼ぶことにしましょう。
注意!
重ね合わせ法で作ることができるのは、あくまでも「平均顔っぽいもの」にすぎません。モーフィングによる本当の意味での平均顔を作ってみたいという方には、「平均顔の作り方 (2) モーフィングでもっと綺麗な平均顔を作る」がオススメです。よく見かける「AKB48の平均顔」などの作例の多くは、モーフィングで作られているはずです。
もし、私たちがGaltonと同じ方法で「平均顔っぽいもの」を作るとしたら、レイヤー機能を持ったフォトレタッチアプリ(ペイントアプリ)を使うのが手っ取り早いでしょう。特別な作成ツールは必要ありません。
真っ先に思いつくのがAdobe Photoshop(フォトショップ)ですが、レイヤー機能があって、それぞれのレイヤーの透明度(不透明度)を変えることができれば何でも構いません。
私はなんとなくパソコン用のソフトをイメージしていますが、スマートフォン用のアプリでレイヤー機能が使えれば、それでも構わないわけです。
では実際にやってみましょう。
平均顔を作るときには、2枚以上の顔写真が必要です。
好きなアイドルグループのメンバーの写真でもいいし、友達とあなたの写真でもかまいません。
[図1]
一枚目の写真がこれだったとします。
これを、フォトレタッチソフトに読み込みます。
[図2]
一枚目の写真の上に新しいレイヤーを作って、2枚目の写真を読み込みます。
この状態では、この2枚目の写真しか見えませんので、2番目のレイヤーの不透明度(透明度)を50%に下げます。1番目のレイヤーの不透明度は変更しないでください。
[図3]
不透明度を50%にすると、すぐ下にある1番目のレイヤーの顔が透けてみえるので、こんな風になりますね。
これがGaltonが行った手法、ここで言うところの重ね合わせ法による「平均顔っぽいもの」です。
しかし、これは明らかに変ですね。
顔の特徴がずれてしまっていて、2つの顔が「混じり合っている」という感じが全くしません。
重ね合わせ法というのは、半透明の写真を重ねていくだけの単純で乱暴な方法なので、顔の向きや大きさをあらかじめ揃えておいて、綺麗に重なり合うように調整しておく必要があったんです。
では、ちゃんと写真を調整してから重ね合わせることにしましょう。
調整のやり方はいろいろ考えることができますが、今回は、2番目(以降)の顔の両目が、1番目の顔の両目と一致するように調節することにします。そのためには、フォトレタッチアプリの回転機能、拡大縮小機能を使う必要があると思います。基本的な機能なので、作業はそれほど難しくないですよね。
[図4]
できあがったのがこれです。1番目の顔と2番目の顔の両目がぴったり重なっているのがわかるでしょうか?なお、この例では、2番目の顔の向きと大きさだけでなく、1番目の顔の向きも調節してあります。頭が斜めに傾いているので[図1]、両目の中心を結んだラインが水平に近くなるように調節しました。
ここで注意点があります。顔と顔を揃えるためには向きの調節だけでなく、拡大縮小を行う必要が出てくるはずですが、その際に顔の縦横の比率を変えてはいけません。
いや、「いけません」てことはなくて、自由に何をやっても良いのですが、本来の「平均顔っぽいもの」を作りたいのであれば、顔の縦横比は変えるべきではありません。
さて、重ね合わせ法によって作成した上の「平均顔っぽいもの」、いかがでしょうか?
かなりガッカリな出来映えですね。しかし仕方が無いのです。重ね合わせ法の原理からすれば、この程度のものしかできなくて当然です。
しかし、重ね合わせる顔の数を増やしていけば、もう少し増しな出来映えに仕上げることができます。
[図5]
3枚目の顔写真を重ねた状態がこれです。
では、ここで問題です。2枚目の写真を重ねるときには、不透明度を50%にしました。では、3枚目の写真の不透明度はどうしましょうか?
答えは、100/3 で、33%です。
[図6]
4枚目の写真を重ねました。
不透明度は、100/4 = 25%です。
この後、もっと写真を重ねていくときに、n番目の写真の不透明度は 100/nパーセントに設定してください。こうすると、顔の重ね順に影響されずにバランス良く顔を合成していくことができます。不透明度の設定を正しく行わないと、一部の顔だけが強く現れた仕上がりになってしまうことがあります(例:あの平均顔が暗いのはなぜか)。
[図7]
10人の顔を重ね合わせた状態がこれです。
両目の周辺はまずまずといった所ですが、全体に見ればがっかりな仕上がりです。
[図8]
これは64名の顔写真を重ね合わせた場合の結果ですが、これだけの枚数を重ねても、このレベルの出来映えです。
平均顔の定義を思い出してみてください。目の間の距離、輪郭の形などが、いくつかの顔の平均値となっている顔のことでしたね。しかし、このような重ね合わせを行ったからといって、顔の形態的特徴の平均化が行われるわけがありません。今まで「平均顔」はなく、「平均顔っぽいもの」という表現を使ってきたのはそのためです。重ね合わせ法によって平均化が行われるとしたら、重なり合った点の色合いくらいのものでしょう。
[図9]
上の作例は図0に示したものと同じで、モーフィングによって作成した平均顔です。単なる重ね合わせとは違って、顔が完全に混ざり合っているのが分かると思います。
もしあなたが作ろうと思っている平均顔がこういったものであるとするならば、重ね合わせ法では不十分だと言わざるを得ません。
顔を重ねる=平均顔、ではないのです。
顔を重ねる=平均顔、ではないのです。
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